肥満の女性における月経とケトジェニック食との関連性
2024年10月1日
今月のグローバルスキャンは2024年8月に発表された論文を要約してお届けいたします。
はじめに
過剰な内臓脂肪は血糖値を正常に保つ機能を乱し、血糖値が高い状態が続いたり、インスリンが効きにくくなる状態を引き起こしやすくなります。
アメリカの成人女性の約40%が糖尿病または糖尿病予備軍と診断され、これにより多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や月経不順、不妊などのリスクが増大する可能性があります。
そこで今回注目したのは、炭水化物を制限し、適度なたんぱく質と脂肪を摂取することで血中ケトン濃度を増加させて、血糖値やホルモンバランスに良い影響を与えるとされているケトジェニックダイエットです。
特に女性において、ケトジェニックダイエットが代謝の問題やホルモンの不調を改善する可能性があると注目されています。
今回の研究では、ケトジェニックダイエットが肥満の女性の月経に対して、どのような影響を与えるのかを調査しました。
どのような研究?
今回の試験はアメリカのオハイオ州立大学の協力を得て、計6週間にわたって実施されました。
対象は肥満女性12名(平均BMI 31.6)とし、2つのグループにランダムに分けられました。(図1参照)
グループAはケトジェニックダイエットとして、炭水化物を1日約40gに制限し、残りのエネルギーは主に脂肪から摂取しました。(画像1参照:1日に摂取する食事のメニュー例)
グループBは低脂肪ダイエットとして、脂肪摂取量を全エネルギーの25%に制限し、残りのエネルギーは炭水化物から摂取しました。
今回の試験では、参加者は試験後にR-βHB(R-ベータヒドロキシ酪酸)の測定と月経の変化を調べるアンケートに回答しました。
試験の結果
①R-βHB(R-ベータヒドロキシ酪酸)
ケトン食を摂取したグループAでは、R-βHBの濃度が試験期間中ずっと持続した一方で、低脂肪食を摂取したグループBでは、R-βHB濃度に変化は見られませんでした。(表1参照)
②月経の変化
ケトジェニックダイエットを実施したグループAでは、『月経に変化なし』と回答する割合が減少し、月経の強度(月経の出血量や程度)が変化する割合が増加しました。
また、低脂肪ダイエットを実施したグループBと比較すると、グループAは特に28日目と42日目に有意な差が見られました(表2参照)。
さらに、グループAの6名中3名は1年以上月経がなかったが、試験期間中に月経が再開したと報告しています。
さいごに
本研究の結果、ケトジェニックダイエットが月経に良い影響を与える可能性が示唆されました。
その具体的なメカニズムについてはまだ明らかになっていないため、今後はさらなる研究を進めることで、ケトーシスの新しい治療法が確率されていくでしょう。
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11329152/
訳:Nanami Hamashita