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MCTが認知機能に与える効能

2024年9月1日

世界各地から発信される最新の研究報告をお伝えします

今月のグローバルスキャンは2023年2月に発表された論文を要約してお届けいたします。

はじめに

自然老化やアルツハイマー病などの神経変性疾患では、脳のグルコース代謝が低下する傾向がありますが、ケトン体をエネルギー源として利用する能力は維持されます。

また、MCT(中鎖脂肪酸)の摂取によってケトン体の生成が促進され、特にケトジェニックダイエットや断食中にケトン体のレベルが上昇しやすくなります。

これまでの研究では、MCTの摂取によって高齢者や神経変性疾患を持つ患者、健康な成人と幅広い人々の認知機能を改善する可能性が示唆されています。

これらの研究は、ケトン体が脳のエネルギー源として利用されることで神経細胞を保護する効果があるという仮説のもとで実施されていますが、具体的なメカニズムについてはまだ解明されていません。

そこで今回の研究では、MCTの摂取が「神経保護作用」に対してどのような影響を与えるのかを評価しました

どのような研究?

今回の試験はロシアのサンクト・ペテルブルグに位置する研究所の協力を得て、計28日間で実施されました。

対象は体重が同等の雄ラット8匹とし、4つのグループにランダムに分けられました。(図1参照)

図1

どちらのグループのマウスも胎児期間中は、親マウスが妊娠中にそれぞれ対象の飼料を摂取しました。

また評価基準として、①体脂肪、②インスリン抵抗性、③PPARα(ピーピーエイアールアルファ)の3項目を試験後に測定しました。

試験の結果

①体脂肪

ホエイプロテインを摂取したグループBにおける体脂肪量は、グループAよりも顕著に低い数値となりました。

表1

②インスリン抵抗性

インスリン抵抗性においても、ホエイプロテインを摂取したグループBの数値は有意に軽減されました。 

③PPARα

PPARαについては、ホエイプロテインを摂取したグループBでより高い数値が確認されました。 

さいごに

胎児期の栄養摂取や乳児期からのホエイプロテインの摂取は、脂質代謝を活発にすることでインスリン抵抗性を軽減し、体脂肪や中性脂肪の減少につながる可能性があります。

このメカニズムは、脂肪酸が体内でエネルギーに変換されるプロセスが関係していると考えられますが、結論を導くには今後より大規模な研究が必要です。

参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10223508/

訳:Nanami Hamashita