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「肌に優しいVCO」 ~自然の力で手肌のケア~

2025年12月1日

今月のグローバルスキャンは 2021年1月に発表された論文を要約してお届けいたします。

参考文献:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8447131/

はじめに

冬の冷たい空気や毎日の手洗い、そして消毒用のアルコールなど、
私たちの手は、知らず知らずのうちにたくさんの刺激を受けています。

こうした刺激は、肌のうるおいを奪い、バリア機能(肌を守る力)を弱めてしまう原因になります。

その結果、手がカサカサしたり、赤くなって痛みを感じたりすることもあります。

そこで今回の研究では、VCO(バージンココナッツオイル)が、乾燥やアルコールによる肌へのダメージをやわらげることができるかどうかを調べました。

どのような研究?

今回の研究はインドのInstitute of Chemical Technologyの協力を得て、計15日間にわたって実施されました。

特別な皮膚疾患を持っていない、健康な25〜60歳の12人を対象に、3つのグループに分けられました。

そして、各グループの処置が終わった後に、一度肌の状態を調べ、
その後6〜8滴(約0.25ml)のVCOを1回塗布しました。(図1参照)

VCOを塗布後30分待機したのち、皮膚を詳しく分析し、下記の2点を測定しました。

①皮膚からの水分蒸発量

手の甲からどれだけ水分が蒸発しているかを、専用の機械を使って測定しました。
これは肌のバリア機能を見るための方法で、水分の蒸発量が多いほどバリアが壊れている(ダメージを受けている)ことを意味します。
VCOを塗布する前の数値を基準(100%)とし、VCO塗布後に水分蒸発量がどれだけ変化したかを%で示しています。

②肌の炎症度

肌がどのくらい炎症を起こしているかを調べるために、炎症に関係する物質である、TNF-αの量を測定しました。
TNF-αは、炎症が起きると体内で増えるサイン(=炎症マーカー)で、数値が高いほど肌がダメージを受けていることを示します。
※TNF-αの量は「pg/mL(ピコグラム毎ミリリットル)」という単位で表されています。

◆測定には「テープストリッピング法」という方法を使用し、専用のテープを手の甲に貼ってはがすことで、肌表面の角質をやさしく採取して調べました。

研究の結果

①皮膚からの水分蒸発量

アルコールを6回使ったグループCは、水分蒸発量が最も多く、肌のバリア機能が大きく低下していましたが、VCOを塗ることで水分蒸発量が大きく抑えられました。(グラフ1参照)

②肌の炎症度

この結果から、特にアルコールを繰り返し使用したグループCでは、VCO塗布前は炎症度が最も高くなっていますが、VCO塗布後は明らかに炎症度が低下しており、アルコールによる刺激を和らげる効果があることが示唆されました。(グラフ2参照)

さいごに

今回の研究から、VCOには、肌のうるおいを守り、炎症をやわらげる効果があることが分かりました。

手洗いや消毒が日常になった今、手肌は思っている以上にダメージを受けています。

VCOのような天然のオイルを使ったやさしいケアが、肌を守る一つの方法になるかもしれません。