「磁気で変わる薬の届き方」 ~皮膚の奥まで届ける工夫~
2025年11月1日
今月のグローバルスキャンは 2025年 7月に発表された論文を要約してお届けいたします。
参考文献:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S093964112500092X

はじめに
肩や関節のこわばりや、ちょっとした痛みなどに、私たちの生活には「塗る・貼る」ケアが身近にあります。
手軽に取り入れやすく、日々のセルフケアとして活用が広がっています。
外用のアプローチは、体への負担が少なく取り入れやすい反面、成分の肌への届き方の最適化が課題となっています。
そこで近年、磁気を使って「届き方」を助ける研究が注目されています。
本研究では、回転磁場(交流磁気の一種)によって成分の届き方にどのような変化が生じるのかを詳しく調査しました。
どのような研究?
今回の研究はポーランド・シュチェチンのポメラニアン医科大学の協力を得て実施されました。
豚の皮膚を対象とした実験で、同じ場所に1㎠の広さで、ナプロキセン10mg入りの溶液を1ml塗りました。
塗ったまま何もしない場合と、50Hzの磁気を当てた場合を、それぞれ8時間観察しました。(図1参照)


その後、皮膚を詳しく調べ、2つの点を測定しました。
①累積透過量
専用の溶液を使用し、塗った成分がどれだけ透過したかを時間ごとに測定しました。
グラフの線が高いほど、その時点までに透過した量が多い=よく透過したと考えられます。
(単位:µg/cm²)
②皮膚残留量
8時間後に、塗布面にどれだけ成分が残っているかを専用の溶液で採取して測定しました。
棒グラフの値が低いほどその時点での残りが少ない=塗布面にとどまらず内側へ届いたと考えられます。
※使用面の質量あたり(µg/g)に換算して比較しています。
研究の結果
①累積透過量
磁気を当てたグループBの方が、各時点でナプロキセンの透過量がより多いことがわかりました。
この結果から、磁気を使うと成分の届き方が良くなることが示唆されます。(グラフ1)

②皮膚残留量
磁気をあてたグループBの方が、皮膚に残ったナプロキセン量が少ないことがわかりました。
この結果から、磁気をあてた方がより成分が浸透していると考えられます。(グラフ2)

さいごに
今回の研究では、磁気を用いることで外用成分の届き方がより良くなる可能性が示されました。
日々のセルフケアとして身近な「塗る・貼る」ケアも、どう届けるかで実感は変わります。
磁気の力を上手に活用できれば、同じ成分でもよりムダなく、必要なところへ効率よく届けられる可能性が示唆されました。
今後の研究が進めば、からだに優しい届け方が新たなスタンダードとなるかもしれません。

