
「磁気のチカラで心が軽くなる?」 ~ 磁気と気持ちの関係 ~
2025年10月1日
今月のグローバルスキャンは 2025年 6月に発表された論文を要約してお届けいたします。
参考文献:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11508854/
はじめに
最近、疲れやすさや気持ちの落ち込みを感じる人が増えているといわれています。
なんとなくやる気が出ない、前よりも気持ちが落ち込みやすいといった日々が続くと、日常生活にも大きな影響が出てきます。

現代のストレス社会において、心の不調は誰にとっても身近な問題です。
そのため、心の健康を守るための意識はますます高まっています。
近年では、心のケアに役立つ様々なアプローチが注目されており、その一つとして磁気に関する研究も進められています。
今回は、磁気が気持ちの改善に与える可能性について調査しました。
どのような研究?
今回の研究は名古屋大学の協力を得て、約50日間にわたって実施されました。
マウスを対象に、各グループ6〜8匹の3つのグループに分けられました。
(図1参照)

実験のはじめの10日間は、グループBとグループCのマウスを攻撃的なマウスと同じゲージに一定期間入れ、ストレスを与えました。
その後、グループCのマウスには、ストレスを受けたあとに、専用の装置を使って毎日約10マイクロテスラ(μT)の磁気をあてる処置を、6週間続けました。
その上で、次の2つの項目を測定しました。
①水泳テスト
グループCのマウスには、磁気をあてはじめてから2週間後のタイミングで「水泳テスト」を行いました。
このテストでは、マウスを水に入れ、泳ぐのをやめてじっとしている時間を測定します。
この時間が長いほど「動く気力がない」状態とされ、気持ちの落ち込みが反映されていると考えられます。
反対に、この時間が短いと、気持ちが改善している可能性が高いと考えられます。
②社会的交流テスト
磁気をあてはじめて6週間目(最終週)に、マウスが他のマウスにどのくらい関心を持つかを調べるテストを行いました。
テストでは、それぞれのマウスを広い箱に入れ、あわせてメッシュのケージも中に置きます。
はじめにケージだけを入れて150秒間観察し、その後、実験に使用していない「見知らぬマウス」をメッシュのケージに入れて、さらに150秒間観察しました。
見知らぬマウスがいない場合といる場合のそれぞれで、マウスがどのくらいその場所に近づいたかを測定しました。
実験の結果
①水泳テスト
ストレスを受けたグループBとグループCを比べると、磁気をあてたグループCのマウスは、不動時間が明らかに短くなっていました。
また、ストレスを受けていないグループAの不動時間と近い結果となり、この結果から、磁気の使用により気持ちが改善されていることが示唆されます。(グラフ1)

②社会的交流テスト
磁気を使用していないグループBでは、他のマウスと接触している時間がかなり短くなりました。
一方で、磁気をあてたグループCでは接触時間が明らかに長く、通常飼育のグループAの結果に近い水準を示しました。
このことから、磁気には社会性や交流意欲の低下を防ぐ効果がある可能性が示唆されました。(グラフ2)

さいごに
今回の研究では、磁気がストレスによる気持ちの落ち込みや、社会性の低下を和らげる可能性が示されました。
日々の生活の中で、気づかないうちに溜まっていくストレスや、それによる気持ちの落ち込みは、私たちの行動や人とのつながりに大きな影響を及ぼします。
磁気の力を活用することで、そうした心の変化をやわらげ、より前向きな日々を過ごすきっかけになるかもしれません。
今後のさらなる研究により、磁気を活用した心のケアは、これからの社会で大きな役割を担う可能性があります。
