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「心と体の味方 レスベラトロールの効果」~研究が示す可能性~

2025年8月1日

今月のグローバルスキャンは 2025年5月に発表された論文を要約してお届けいたします。

参考文献:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12102494/#fsn370304-sec-0011

はじめに

疲労が溜まると体がだるく感じるだけでなく、気分が落ち込んだり、集中しづらくなったりと、心の不調も感じやすくなります。

近年の研究では、こうした心や脳の疲れの背景に、体内の炎症や腸内環境の乱れが深く関わっていることが明らかになってきました。

腸と脳は密接に繋がっており、腸内環境が悪化すると、脳の働きにも悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。

こうした、心と体の疲れを内側から支える成分として、近年注目されているのが「レスベラトロール」です。

ポリフェノールの一種であるレスベラトロールは、高い抗酸化作用や抗炎症作用を持ち、健康維持や機能改善に関する研究が世界中で進められています。

本研究では、レスベラトロールが腸内環境や炎症などに、どのような効果をもたらすのか調査しました。

どのような研究?

今回の試験は中国の臨沂大学の協力を得て、4週間にわたって実施されました。

マウス24匹を対象に、通常飼育されたグループ、運動をしたグループ、そしてレスベラトロールを摂取しながら運動をしたグループの3つのグループに分けられました。

今回の実験では、運動として水泳を4週間にわたって実施しました。(図1参照)

そして、以下の項目を測定しました。

① 体力テスト(持久力の変化)
体力を評価するために、水泳で体力テストを行いました。
マウスたちは毎日少しずつ泳ぐ時間を延ばしながら、4週間にわたって運動を続けました。
初日は5分間からスタートし、毎日5分ずつ延長されていきました。
12日目には 60分間となり、それ以降(13〜28日目)は 毎日60分間の水泳を行いました。

そして4週間後、最終日にどれだけ長く泳げるか、その時間を測定しました。
このテストの結果が、体力の違いを示す指標となります。

② 腸の炎症の指標(mRNA)
4週間の水泳を実施した最終日には、それぞれのグループのマウスの腸の状態も詳しく調べました。

今回、「IL-1β(アイエルワンベータ)」という炎症に関わる物質を作る元となるmRNAの量を測定しました。

この実験では、通常飼育グループの値を「1」として、他のグループの値がどの程度かを比較する「相対的なmRNA量」で示しています。

この数値が高いほど、腸で炎症が起きている可能性があると考えられます。

実験の結果

①体力テスト(持久力の変化)
グループBは、疲労により持久力が下がっているのに対し、レスベラトロールを与えたグループCは、基準値であるグループAの記録を上回るほどより長く泳ぎ続けることができ、持久力が向上したことがわかりました。(グラフ1参照)

※グループA(通常飼育されたマウス)は4週間の実験期間の最終日のみ、他のグループと同じように水泳をし、記録を測定しています。

②腸の炎症の指標(mRNA)
グループBとCでは、疲労により炎症の数値が基準値であるグループAより高くなっていますが、
レスベラトロールを与えたグループCでは、グループBに比べてmRNA量が明らかに少なく、腸内の炎症が抑えられる可能性が示唆されました。(グラフ2参照)

さいごに

今回の研究では、レスベラトロールを摂取したマウスにおいて、運動後の体力がより高まり、腸における炎症のサイン(mRNA)も抑えられていることがわかりました。

この結果は、レスベラトロールが疲労時のパフォーマンスを高めるだけでなく、腸の環境を整えることで、心や脳の健康にも良い影響を与える可能性があることを示唆しています。

暑さで体も心も疲れやすいこの季節、レスベラトロールを含む食品を生活に取り入れてみるのも、自分をいたわるひとつの方法かもしれません。
内側からのケアで、夏を元気に乗り越えていきたいですね。