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「肝臓に脂肪を溜めない食習慣」 ~中鎖脂肪酸が持つ力とは~

2025年7月1日

今月のグローバルスキャンは 2024年 7月に発表された論文を要約してお届けいたします。

参考文献:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11327439/#sec2

はじめに

肝臓は、エネルギー代謝や栄養の処理を担う重要な役割を果たしています。

しかし、脂肪のとりすぎによって肝臓に脂肪がたまると、脂肪肝と呼ばれる状態を引き起こし、健康に大きな影響を及ぼします。
脂肪肝は、血糖値の乱れや脂質異常を通じて、生活習慣病のリスクを高めることが知られています。

こうした背景から、近年注目されているのが「中鎖脂肪酸(MCT)」です。

中鎖脂肪酸は、一般的な脂肪よりも体にたまりにくく、エネルギーとして素早く利用される特性を持っています。
そのため、肝臓への脂肪の蓄積を防ぎ、代謝をサポートする働きが期待されています。

本研究では、中鎖脂肪酸を多く含む食事が、肝臓の脂肪蓄積にどのような影響を与えるかについて調べました。

どのような研究?

今回の研究は、デンマークのコペンハーゲン大学と日本の筑波大学の協力を得て、計16日にわたって実施されました。

健康なマウス16匹を対象に、脂質の種類が異なる2つの食事グループに分け、それぞれの影響を比較しました。(図1参照)

マウスは16日間、それぞれの食事を自由に摂取しました。

食事期間終了後、以下の項目を測定しました。

①肝臓に溜まった脂肪の量

▶肝臓の状態を詳しく調べ、脂肪の溜まり具合に応じて健康状態を4段階に分類し、それぞれに属するマウスの割合を調べました。

②血糖値

▶体内の血糖値の変化を測定しました。

iAUC(incremental Area Under the Curve) という、血糖値の上昇量を数値で表す指標を用いて、各グループの血糖値の上昇量を表しました。

また、単位である「mg/dL・min」は、血糖値(mg/dL)と時間(分)を掛け合わせたもので、この数値が小さいほど、血糖値の上昇が抑えられていることを表します。

研究の結果

①肝臓に溜まった脂肪の量

グループBのマウスの肝臓は、健康な状態が保たれ、ほとんどが「健康な状態」に分類されました。(グラフ1)

②血糖値

グループBでは、iAUCの値が低く、血糖上昇が抑えられました。(グラフ2)

さいごに

今回の研究では、中鎖脂肪酸を含む食事を摂取したマウスは、肝臓に脂肪がたまりにくく、血糖値の上昇も抑えられるという結果が示されました。

このことから、中鎖脂肪酸は脂肪肝や血糖値の乱れといったトラブルを防ぐサポートになる可能性が示唆されました。

ココナッツミルクやMCTオイルなど、中鎖脂肪酸を含む食品を日々の食生活に取り入れてみることで、肝臓の健康を見直す第一歩となるでしょう。