
「脳と免疫の味方!ケルセチンの効果」 ~研究が示す可能性とは~
2025年5月1日
今月のグローバルスキャンは2024年5月に発表された論文を要約してお届けいたします。
参考文献:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11084035/#Sec2
はじめに
年齢を重ねると、がんや心臓病のリスクが高まり、記憶力も低下しやすくなります。
特に高齢になると、アルツハイマー病やパーキンソン病などが認知機能に影響を与え、さらに免疫力の低下により感染症にもかかりやすくなります。
そのため、近年こうした脳の機能低下を防ぐ成分としてケルセチンが注目されています。

本研究では、ケルセチンが記憶力や免疫細胞にどのような影響を与えるのかを調べ、認知機能改善の可能性を探りました。
どのような研究?
今回の試験は中国の同済大学の協力を得て、計30日にわたって実施されました。
10匹のマウスを対象とし、何も与えていないグループA(5匹)と、ケルセチンを30日間与えたグループB(5匹)に分けられました。(図1参照)

そして、それぞれのグループで試験を行いました。
評価基準として、試験①では認識指数を測定しました。
認識指数は、新しい物体と見慣れた物体を区別する能力を示す指標です。
それぞれのグループのマウスを箱に入れ、同じ2つの物体を覚えさせます。
そして、1時間後に1つの物体を新しいものに置き換え、マウスがどちらに興味を示すかを観察します。
その際、マウスが新しい物体に向かう時間を測定し、その時間を基に認識指数を算出します。
記憶力が良い場合、新しい物体を初めて見るものだと認識するため、より長く注目する傾向があります。
試験②ではNK細胞の割合を計測しました。

試験の結果
試験① 認識指数グループBのマウスは新しい物体により長く注目し、認識指数がグループAよりも高いことが分かりました。(グラフ1参照)

試験② NK細胞グループBでは、NK細胞の割合が有意に増加しました。(グラフ2参照)

このことから、ケルセチンがNK細胞の増加を促し、免疫機能の活性化に関与する可能性が考えられます。
さいごに
本研究の結果、ケルセチンを投与したマウスでは認識指数が向上し、記憶力の改善が示唆されました。
また、NK細胞の増加が確認され、免疫機能にも影響を及ぼす可能性が示されました。
これらの結果から、ケルセチンは脳機能と免疫機能の両面で有益な作用を持つ可能性があると考えられます。
ケルセチンの可能性はまだまだ広がっています。今後の研究によって、その働きのしくみがさらに明らかになれば、私たちの生活に役立つ活用法がますます広がっていくことでしょう。