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「バージンココナッツオイルの可能性」 ~糖尿病患者における健康促進効果~

2025年2月1日

今月のグローバルスキャンは2023年1月に発表された論文を要約してお届けいたします。

参考文献:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9920521/

はじめに

発展途上国では生活水準の向上に伴い、糖尿病の発症率が増加しており、医療従事者にとって重要な課題となっています。

これまでの研究では、2045年までに世界中で少なくとも6億2900万人が糖尿病を患うと予測されています。

糖尿病が進行すると血管が傷つき、心臓の病気(冠動脈疾患)や足の血流が悪くなる病気(末梢動脈疾患)を引き起こすことがあります。

これらの病気は、HDLコレステロールの減少と関係している可能性が示唆されています。

近年、バージンココナッツオイル(VCO)が注目されており、ポリフェノールを多く含むことから、血液中の中性脂肪を減らす効果があるとされています。

そこで本研究では、糖尿病患者の血液中の脂質に対するバージンココナッツオイルの効果を明らかにすることを目的としました。

どのような研究?

今回の試験はインドネシアのマカッサルにあるハサヌディン大学附属病院の協力を得て、計30日間にわたって実施されました。

対象は下記の条件に当てはまる20歳以上男女136名とし、2つのグループにランダムに分けられました。(図1参照)

【対象者条件】

☑ BMIが基準値内(標準体重)

☑ 糖尿病および脂質異常症と診断されている

☑ 普段バージンココナッツオイルを摂取していない

試験の評価基準として、被験者は試験前と30日後に血液検査を行い、HDLコレステロールのレベルを測定しました。

また、被験者は毎日の食事を記録を行い、そのデータを元に試験前後のエネルギー摂取量を算出しました。

試験の結果

【エネルギー摂取量の変化量】

バージンココナッツオイルを摂取したグループAでは、エネルギー摂取量(kcal)の変化指数がグループBに比べて有意に低下しました。(グラフ1参照)

これはバージンココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸が速やかにエネルギーに変換され、摂取後に満腹感を感じやすくなり、食事の摂取量が減少した可能性があります。

【HDLコレステロール】

バージンココナッツオイルを摂取したグループAでは、HDLコレステロール(mg/dL)の変化指数が有意に増加しました。(グラフ2参照)

さいごに

本研究の結果として、糖尿病患者が30日間バージンココナッツオイルを摂取することで、エネルギー摂取量の減少、HDLコレステロールの有意な増加が確認されました。

本研究は、バージンココナッツオイルの摂取が糖尿病患者の脂質改善に寄与し、心血管疾患や動脈硬化の予防に役立つ可能性を示唆しています。

今後の研究では投与量や期間を最適化し、バージンココナッツオイルの血中脂質改善効果のメカニズムを解明するさらなる研究が必要です。